Ｐ．Ｊ．ルドゥーテ

ルドゥーテについて

ピエール・ジョゼフ・ルドゥーテ (Pierre Joseph Redoute、1759-1840)は、南ネーデルランド出身のベルギー人で、ボタニカルアート（植物画）史上最も優れた画家の一人に数えられます。
当初は、ルイ16世王妃、マリー・アントワネットの博物蒐集室付素描画家に任命され、フランス革命後は、ナポレオン皇妃、ジョゼフィーヌから寵愛を受けて宮廷画家として活躍しました。
生涯に有名な『薔薇図譜』のほか、『ユリ科植物図譜』、『美花選』など多数の植物画を残しましたが、いずれも傑作で、「花の画家」、「バラの画家」とも呼ばれています。

『ユリ科植物図譜(Les liliacees)』，1802-16

『ユリ科植物図譜』はルドゥーテの代表作です。

有名な『バラ譜』で描いた双子葉植物のバラに対し、本図譜は単子葉植物を取り上げ、ユリに限らず、アマリリスやアイリス、蘭なども描かれており、その多様性に魅力が感じられます。
ジョセフィーヌのマルメゾン城で、最も華やかに生活していた頃の作品です。
ルドゥーテのこの作品は、いずれも構図、描写の精密性（スティップル彫版技法*によるところが大きい）にすぐれ、植物画を芸術的なレベルにまで高めた最初の事例です。

『バラ図譜(Les roses)』，1817-21

ナポレオン皇妃、ジョゼフィーヌは、マルメゾン城に広大なバラ園を営み、世界中から多種多様なバラを蒐集していました。
ルドゥーテは、このバラ園でそのような数々のバラを描いて出版したいと考え、ジョゼフィーヌからバラ園に出入りする許可を得ました。
以来、ルドゥーテはマルメゾン城のバラの絵に没頭することとなりました。
すでに述べましたように、ルドゥーテはいくつかの植物図譜を出版しましたが、その中でも『薔薇図譜』は最高傑作といわれています。
この作品は全部で３巻からなり、１６９種類の図譜を含み、ジョゼフィーヌの死後の1817年から1821年にかけて出版されました。

『美花選（Choix des plus belles fleurs）』，1827-33

ボタニカルアート史上最高傑作とも称される、『ユリ科植物図譜』や『薔薇図譜』は専門家向けだったのに対し、本書はより一般的な読者を想定して製作されたもので、植物学的な観点からは批判もあるようですが、一方でルドゥーテの画家としての魅力を最も良く表しているとの評価もあります。

スティップル彫版技法とは

普通の銅版画が線刻によるのに対し、点描による手法を用いています。
この作品は全部で３巻からなり、１６９種類の図譜を含み、ジョゼフィーヌの死後の1817年から1821年にかけて出版されました。
ビュラン (一種の彫刻刀) の先でつついて無数の刻点を作り、点描の密度によって明暗を生み出しています。
この作品は全部で３巻からなり、１６９種類の図譜を含み、ジョゼフィーヌの死後の1817年から1821年にかけて出版されました。
微妙なぼかしの表現に優れており、ルドゥーテの植物図譜はこの技法を用いた代表的なものです。

★ルドゥーテの『薔薇図譜』 カタログ

★ルドゥーテの『美花選』 カタログ