ジョルジュ・バルビエ(George Barbier、 1882-1932)は、20世紀初頭のアールデコ期に、時代の最先端で活躍したアーティスト、ファッションイラストレーターです。
1882年にフランスのナントの裕福な家庭に生まれ、1908年にパリに上京し、エコール・デ・ボザール(Ecole des Beaux-Arts)で芸術を学びました。
極めて多才で、舞台/バレエ衣裳、宝飾品、壁紙等のデザインを手がけ、とりわけハイセンスなオートクチュールのファッションイラストレーターとしてその名を馳せました。
またバルビエは、 『La Gazette du Bon Ton』や『La Vie Parisienne』といった雑誌の編集長、ジャーナリストも務め、『ポショワール(pochoirs)』という技法(ステンシル型染め)を駆使して、色鮮やかでエレガントなファッション画を世に送り出しました。
彼の死後、その作品は長年忘れ去られましたが、2008年秋にイタリアのヴェニスで開催された、『George Barbier The Birth Of Art Deco』展を契機に再び注目を集めています。
エレガントで洗練された作風は、アールデコ様式の典型であり、1920年代の雰囲気、特に上流階級の頽廃的なライフスタイルを色濃く反映していますが、これには東洋趣味(ジャポニスム、シノワズリ等)の他、英国の奇才オーブリー・ビアズリー(Aubrey Beardsley)の影響を見逃すことはできません。
ポショワール技法は、古い日本画の印刷技法からヒントを得たと考えられています。一方、セルゲイ・ディアギレフ率いるバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)が、1909年にパリ巡業した際には、その公演を鑑賞し、アンナ・パヴロワやヴァーツラフ・ニジンスキーら新進気鋭の舞踏家や、芸術監督レオン・バクスト、アレクサンドル・ブノワらによる舞台装置からも多大な影響を受けたと言われています。
「エレガンスの概念を知りたかったら、バルビエのモード・イラストを見よ」とは、日本のバルビエ研究の第一人者、鹿島茂氏の言葉です。
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