ヘンリエット・ウィルビーク・ル・メール(Henriette Willebeek Le Mair, 1899-1966)は、オランダの挿絵画家、絵本作家です。
ロッテルダムの裕福な商人の家庭に生まれました。
父親は絵画を描き、母親は詩を嗜み、ル・メールはその両親から人生の様々な場面で多くの影響を受けたといわれています。
子供の頃から、両親に連れられて多くの地を旅し、とりわけ中東地方を旅行したとき、その文化や宗教に強い感銘を受け、そのような経験は彼女を中東・東洋の哲学や宗教、美術に傾倒させるきっかけとなり、その後の彼女の芸術に大きな影響を及ぼしました。
1920年に結婚すると、1921年に、夫と共にイスラム教の禁欲的・神秘主義的な宗派スーフィーに改宗しました。
1904年、わずか15歳の時に、両親の援助を受け最初の絵本 『Premieres Rondes Enfantines』をフランスで出版しました。
そのおりパリ滞在中は、フランスの児童画の巨匠 モーリス・ブテ・ド・モンベル から指導を受けています。
1909年から1911年にかけて、Rotterdam Academyで勉学にいそしむ一方、マザーグースを含む『Our Old Nursery Rhymes』を出版し(Augner Limited)、その後も『Little Songs Long Ago』(1912)、『Old Dutch Nursery Rhymes』(1917年)など、優れた児童書を手がけました。
これらの作品は、当時大変評判となり、ステューディオ誌では「ケイト・グリーナウェイ以来の、子供の精神に寄り添い、子供の世界を再現した作家」と評されています。
20世紀初頭、ヨーロッパ上流家庭で育まれる子供の風俗を、繊細な描線とソフトタッチで上品な色彩で描いた作品は、どこか懐かしさを感じさせ、いまなお多くのファンを魅了しています。
ル・メールは決して多作家とはいえませんが、結婚して改宗した後は、創作活動は以前ほど活発ではなくなり、その後の人生は夫と共に貧民のためのボランティアに費やされることが多くなり、1966年、77歳でその生涯を閉じました。
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